
「なんでも鑑定団」に「曜変天目茶碗ではない」と異議を唱えた陶芸家の長江惣吉氏の個展観に行きました。
瀬戸市美術館で企画展「曜変・長江惣吉展」を観に行きました。長江氏は、瀬戸市内在住の陶芸家で、親子二代にわたって、「曜変」の再現に取り組んだ作家さん。「曜変」とは、漆黒の釉に青い光彩を伴う斑文のある天目茶碗のことです。12世紀から13世紀にかけての中国・南宗時代に作られたといわれその光彩は謎に包まれ、再現を目指す陶芸家は多いが、長江さんは実践でも、研究でもその最先端にいる。
事件の茶碗は2016年12月20日放送のテレビ東京系「なんでも鑑定団」に登場。古美術鑑定家の中島誠之助氏が徳島県内で新たに国宝級が見つかったと発表し「曜変天目茶碗」と鑑定。2500万円の評価額をつけた上で、「国宝になっていたかもしれない大名品」と称賛していた。
それに対しすぐに「本物とは思えない」と異論を唱えた陶芸家の九代目長江惣吉氏は「曜変天目」と鑑定された今回の茶碗について、ヨーロッパで18世紀以降に開発された「スピネル顔料」(陶磁器の釉薬用絵具)を塗り付けて発色させたものだとする見解を発表している。父の8代惣吉さんは研究に陶芸家人生をかけた。長江さんは父が亡くなった1995年、その研究の検証からスタート。それから中国・建窯へ赴くこと28回。その窯跡で蛍石の砕片を見つけたのを契機に、焼成中に蛍石の粉末を投入する技法を見いだす。豊田工業大との共同研究を重ね、発生するフッ素ガスが化学反応を起こし、表面にできる波状の構造が反射して光ることが分かった。その成果は日本と中国の学界でも発表し、反響を呼んだ。本展覧会は22年に及ぶ研究でたどり着いた成果と、その技法によって創作された独自の世界が広がっていた。
田口聖竜合掌